顔面神経麻痺
 顔面神経麻痺を考える6 
 病的共同運動      こんた治療院

 今回のお話は、顔面神経麻痺の回復期に起こる共同運動についてのお話、後遺症についての各論です。
 病的共同運動については当時からたくさんの質問メールが届いていました。来院される患者さんにも質問を受けてお話をする事も当然多くありました。そんな病的共同運動についての問題は、非常に複雑な内容です。

 病的共同運動

 顔面神経麻痺の後遺症の最も重要な位置にいるのが、この病的共同運動なる、ある顔の動作です。その後遺症について語る前に、この病的共同運動の根本的な正体の解明を、自分自らも課題にあげて集中的に現在もしています。その結果、非常に興味深い事に気がついた点を後にコンテンツとしてアップしています。未だ載せていないものも多数ありますが、私自身長い間、この顔面神経麻痺に関しての病的共同運動の現在の医学理論には納得していないものがあると個人的に考えています。よって、教科書的なありきたりの説明はweb上でもしたくはないと考えています。そんな難しい事も含めて、この病的共同運動というものを少しだけ解説してゆきます。
 顔面神経麻痺の後遺症として代表的なもの、それが病的共同運動といわれるもので、そもそも共同運動という言葉は、脳血管障害などで中枢性神経麻痺になった患者さんで、手足に麻痺が出る運動機能障害をかかえた場合に、その手足に起こっている現象を指す言葉です。この場合は、手足を曲げる屈筋に不随的に筋収縮が起きており、手足を伸ばす伸筋の運動抑制となっているために、例えるならばクルマのアクセルとブレーキを同時に踏んで動いている状態であり、こうした屈筋が伸筋を抑制しながら動く運動を、共同運動というのです。それを顔の筋肉に直接当てはめた言葉にしてしまうと問題があるので、その前に病的と付けている事で区別をしていますが、顔の筋肉の性質として手足の様な明確な屈筋と伸筋の割当は難しいと私は考えていますので、言葉自体でもこの顔に起こる現象を解りにくくしていると考えています。
 病的共同運動の現象を具体的に書いてゆくと、いくつかのパターンがあります。1つは口を前に突き出す動作の時に患側の眼の周りの筋肉が収縮し、眼を細める動作を同時に行う。口を横に開く、いわゆる『イーッ』とする動作の時に眼の周りの筋肉が収縮する。まゆげを引き上げる動作の時に、口角が上に引っ張られる。唾を飲み込む様な動作時に、首筋から胸にかけて引っ張られるなどです。
 本来は口を前に突き出す動作では、健側の眼には力がほとんど入る事なくできるものですが、患側ではその動作で目元に力が入り易くなり、強い強調された状態ですと眼をつぶる様にまで力が入ってきます。顔面神経麻痺の場合には要求に対して、こうした2つの動作を表現している現象を病的共同運動といいます。患者さんは総てのパターンを表現するわけではなく、個人により単独のパターンもあり、複合のパターンもありと様々です。


 顔面神経の回復とその過程

 顔面神経麻痺になると病院で様々な治療を受けてきます。(詳しくは 顔面神経麻痺を考える4 に記載してあります。)麻痺について皆さんがどういうものなのか?治療を受けながら知識を身につけてゆくのもこの時期でもあります。最近ではインターネットの普及にともなって顔面神経麻痺の事が非常に詳しく書かれて、医学知識を簡単に入手できるようになりました。
  その中で回復期の皆さんから一番多く届く相談が、病的共同運動についてです。『神経が回復し始めたのですが、口を横に「イーッ」とすると目が閉じてしまいます。』という文面から始まって、病的共同運動をどの様に回避したら良いのか、といった内容がおおよそです。
 この病的共同運動は、神経が回復する段階で引き起こされるものです。ですから神経麻痺が回復し出すとみなさんは喜び、これで治るんだと明るい希望を1つもらったという気持になりますが、私の治療家としての腕の見せ所は次の難関へすでに目が向いています。それはこれから起こるかも知れない病的共同運動のさらなる回避のための計画です。
 私の治療は治療開始時期から総べてこれらの合併的に起こる問題を考慮して、計画的に治療に入ります。まずは神経を回復させるための準備と顔面の筋肉の萎縮及び顔面の血行回復のための治療ですが、その中にすでに病的共同運動を回避させるための方法も加えています。
 しかしながら本当にこの共同運動の問題はやっかいな問題だと思います。


 神経は動けばいいという問題じゃない

 ホームページに顔面神経麻痺の事を書くようになってから様々なメール相談の中に、相談者と担当の先生とのコミュニケーション不足を感じます。まずは治療方法についての問題を書きたいと思います。率直にいって、顔面神経麻痺の治療は神経が動けばいいとしか考えていない先生の多い事に驚かされます。つまり病的共同運動についての問題を認識していないで、治療を加えてゆく先生の多さに絶句している状態です。もっともっと勉強して下さいと患者さんから心の叫びを受止める必要があるのではと感じています。もちろん私だってこの問題に関してただ黙って見過ごしているわけではありません。講師として教育現場においては指導的立場にある関係上、こうした問題については、口を酸っぱくして指導しています。
 そして、病的共同運動を回避するにはどうしたら良いのかを、自らの腕を磨く事によって研究していただきたいと思っております。そういう私もこの病的共同運動を回避するための方法は、様々な方法を使って治療開始から計画をたてておりますが、神経回復時の難関として認識しています。正直に言って難関です。疾病の事を知れば知る程、そう簡単にはいかないと思ってしまう顔面神経麻痺の難しさの1つです。
 総合病院にて中枢神経麻痺の治療を発症期から担当していた時も、同じように神経の治療において難関はいくつもありました。簡単にいかない問題に対して頭を突っ込みたくなるのが私の性分ですから、仕方ないとしてもそうした人たちが私を待っていると考えると『まかしておきなさい!!』とファイトむき出しになるのが私のもう一つの性分です。病気をやっつけに行く事だけに信念を貫く事ができるのも、そうした人たちが私を支えてくれている御陰だなと感謝しています。顔面神経麻痺で治療に訪れたみなさんもそうした声援を私に送ってくれると思うと、私もその難関の突破に向けて全力で力を注ぎ込みます。
 『先生、顔が動き始めました!』という言葉のうれしさに、治療家としていよいよ難関突破に向けての更に気合いが入る瞬間です。

 病的共同運動の回避のための1つの方法を紹介します

 麻痺した神経が動き出すと、特に口元が動き出すと大半の人が、口を引く動作を一生懸命に始めます。私はこうした動作が出始めると、すぐに口元を引く動作を制御させます。こうした動作が特に共同運動を引き起こすものではないかと考えるからです。電気刺激によって顔の表情筋を動かす治療においてもこの点で一致する事と考えています。
 末梢神経の治療において大切な事の1つとして、不要な力学的運動つまり、現在動かせる筋肉を誘導して運動を指示する場合に、回復期の神経伝達が不完全な状態にも関わらず、誤った動作を表現させる可能性が高いという事を常に考えており、あわてずに神経の状態を見極めながら治療を進めます。この事についての詳しいコンテンツは、<顔面神経麻痺を考える21不随意運動と随意運動>にて書いております。
 先にお話しした、口元を引く動作は習慣化し易い動作です。口元を引くにしても必要以上の(目が閉じそうになる)力はよくありません。神経が筋肉を動かす力が出てきたら、こうした点に気を使う事が良いと思います。
 また、力を使う労働で特に<歯をくいしばる>様な労働は、こうした病的共同運動を強調します。例えば畑仕事や土木作業などはこうした問題を抱えますので、麻痺の回復の状況を見据えながらお仕事の内容や復帰を考えるとよいのではと思います。

 麻痺側の存在感を無くす事

 では、すでに病的共同運動が出ている人はどうしたらいいのでしょう。私の治療院には、こうした病的共同運動がすでに出ている人も、もちろん来ます。その人たちに共通してお話しするのが、麻痺側の存在感を無くす事です。えっ?存在感を無くす?と思われるでしょう。つまり必要以上の力が麻痺側に加わる事において、共同運動が強調されてくるという私の持論において、そうした問題には力を抜くための究極的な発言が非常に理解し易いのです。
 共同運動で悩んでいる方には、是非実行する価値はあります。『麻痺側の存在感を無くす事』です。すると今まで一生懸命に顔に力を入れている動作をしなくなります。この存在感を無くす為には、私は診察において個人個人に治療中に様々なアドバイスをしています。
 確かに実行するには難しいとの声もあがっておりますが、その為に私が診察し管理をしなければならないのですから、文章中の実行指導を受けたい人は御来院下さいませ。

 今後も様々な問題を考えてゆきます

 顔面神経麻痺に関する問題も、様々なメールの返事をいただくことによって、もっと細かく書きたいところも出ています。今後のコンテンツがまとまり次第にUPしようかと考えています。みなさんの御意見やご質問がありましたら、メールやBBSにてお待ちしております。
 なにぶんにも診療の合間にコツコツ仕上げておりますので、なかなかすぐにUPできない事をお許し下さいませ。皆さんの1日も早い回復を願っております。みなさんと一緒に病気をやっつけに行きたいと思っております。




 この顔面神経麻痺について、お悩みや御相談がありましたら 、治療の窓の掲示板、顔面神経麻痺をやっつけに行く掲示板、メールなどから、お気軽にお問い合わせ下さい。院長がお返事いたします。

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 顔面神経麻痺に関係する執筆内容のページです。是非読んでみて下さい。
 こんた治療院 <治療の窓>より抜粋しました。
 毎日、診察の合間にコツコツと執筆しながら早23年が経ちました。皆さんに1つでもお役にたてる事がありましたら、幸いと思いながら、今も尚治療の合間に書き続けている内容です。全国の方から色々な御質問などいただき、毎日心を込めて返信しています。そうしたみなさんの力で、今日まで一生懸命やっていて良かったと思うのは、インターネットのすばらしさの1つだと考えています。

 シリーズ
 顔面神経麻痺を考える

6.1 後遺症各論
<病的共同運動の強調>

7 小児の顔面神経麻痺
:ケア編

8 顔面体操と
顔面の運動は、
やってはいけない

10 顔の痛み 三叉神経痛

21 随意運動と不随意運動

23 やっつけに行く
今回は、
鬼軍曹の
独り言ですか?


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