顔面神経麻痺の後遺症の最も重要な位置にいるのが、この病的共同運動なる、ある顔の動作です。その後遺症について語る前に、この病的共同運動の根本的な正体の解明を、自分自らも課題にあげて集中的に現在もしています。その結果、非常に興味深い事に気がついた点を後にコンテンツとしてアップしています。未だ載せていないものも多数ありますが、私自身長い間、この顔面神経麻痺に関しての病的共同運動の現在の医学理論には納得していないものがあると個人的に考えています。よって、教科書的なありきたりの説明はweb上でもしたくはないと考えています。そんな難しい事も含めて、この病的共同運動というものを少しだけ解説してゆきます。
顔面神経麻痺の後遺症として代表的なもの、それが病的共同運動といわれるもので、そもそも共同運動という言葉は、脳血管障害などで中枢性神経麻痺になった患者さんで、手足に麻痺が出る運動機能障害をかかえた場合に、その手足に起こっている現象を指す言葉です。この場合は、手足を曲げる屈筋に不随的に筋収縮が起きており、手足を伸ばす伸筋の運動抑制となっているために、例えるならばクルマのアクセルとブレーキを同時に踏んで動いている状態であり、こうした屈筋が伸筋を抑制しながら動く運動を、共同運動というのです。それを顔の筋肉に直接当てはめた言葉にしてしまうと問題があるので、その前に病的と付けている事で区別をしていますが、顔の筋肉の性質として手足の様な明確な屈筋と伸筋の割当は難しいと私は考えていますので、言葉自体でもこの顔に起こる現象を解りにくくしていると考えています。
病的共同運動の現象を具体的に書いてゆくと、いくつかのパターンがあります。1つは口を前に突き出す動作の時に患側の眼の周りの筋肉が収縮し、眼を細める動作を同時に行う。口を横に開く、いわゆる『イーッ』とする動作の時に眼の周りの筋肉が収縮する。まゆげを引き上げる動作の時に、口角が上に引っ張られる。唾を飲み込む様な動作時に、首筋から胸にかけて引っ張られるなどです。
本来は口を前に突き出す動作では、健側の眼には力がほとんど入る事なくできるものですが、患側ではその動作で目元に力が入り易くなり、強い強調された状態ですと眼をつぶる様にまで力が入ってきます。顔面神経麻痺の場合には要求に対して、こうした2つの動作を表現している現象を病的共同運動といいます。患者さんは総てのパターンを表現するわけではなく、個人により単独のパターンもあり、複合のパターンもありと様々です。