脊柱管狭窄症、脊柱管狭窄症手術後の下肢の痺れを鍼治療、指圧マッサージにてどのように解決してゆくかを考えています。まずはしっかりとした治療計画をたてる事の重要性からお話いたします。

 脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)という言葉は最近よく患者さんからも聞かれるようになりました。しかしながら一方で腰椎椎間板ヘルニアとの混同をされている方も多く非常にこうした点を取り上げる必要があるのではと思い、今回の執筆になりました。
 なにぶんにも、こうした事が鍼治療の役割との関連性につながるものと考えています。主に手術後の下肢の痺れをどうするか悩んでいる人に聞いていただきたいお話です。


 脊柱管狭窄症とはどんなものかを至極簡単に説明します。

 脊柱管狭窄症については、しっかりとした整形外科のHPを参考にしていただきたいと思いますが、ここでは簡単に御説明いたします。脊柱管とは椎体と椎弓の間にある神経の通り道を指します。この脊柱管を通過する神経が椎体側、椎弓側から圧迫を受けるものを脊柱管狭窄症といいます。
  この脊柱管の狭窄が腰部に起こったものは下肢への痺れとして歩行困難を起こしたりします。この歩行困難には間欠性跛行(かんけつせいはこう)といって100メートル程度で下肢の痛みで歩けなくなり、しばらく休むとまた歩き出せるといった独特な歩行をします。※間欠性跛行は脊柱管狭窄症だけではなく、閉鎖性動脈硬化症の歩行でも起こりますので医師の診察が必要です。腰部には膀胱や直腸に関係した神経(馬尾神経)もあり、排尿の感覚障害、排便の感覚障害や肛門部の違和感(熱感やほてった感じ)が出てくる事もあります。こうした事が腰部に起こった脊柱管狭窄症の主な症状といえます。また、長期間の問題になってきますと支配する筋肉の筋萎縮もみられ、お尻や大腿部の筋肉が細くなってしまいます。

 上の図は脊柱管の狭窄を表している簡易図です。青色で脊髄神経を取りまとめているのが脊柱管です。この脊柱管を圧迫しているものが靱帯が肥厚して脊柱管を圧迫しているケースや、椎間板が変形し脊柱管を圧迫しているケース、または骨変形により脊柱管を圧迫しているというケースがあるそうです。

 腰椎椎間板ヘルニアと
脊柱管狭窄症の違いについて

 腰椎椎間板ヘルニアは、脊柱管狭窄症と同じような臨床所見を持っています。ゆえに素人では見分ける事が非常に困難であり、MRIのない病院では医師の診断にもあいまいな点が指摘されている様ですし、私自身も非常に難しいと思います。私の担当したケースでは椎間板ヘルニアと脊柱管の狭窄が両方存在したというお話を聞かされた事もありました。
 腰椎椎間板ヘルニアの臨床所見は、圧迫と炎症が主な問題です。ヘルニアという意味は突出する、脱するという意味で、腰椎の椎間板の中央にある随核(ずいかく)が突出して、後方部の脊柱管を通過する神経を圧迫すること、そして随核が突出した部分の炎症がこの腰椎椎間板ヘルニアの正体です。脊柱管狭窄症と同様な所見が出るのは、神経を圧迫しているのが随核であるのか、脊柱管の狭窄であるのかの違いで、神経圧迫という状況は同じなのです。ならば、MRIの診断により速答がでるものと思います。



腰椎椎間板ヘルニア図

 上の図は腰椎椎間板ヘルニアの簡略図です。図の中の脊髄神経を突出した随核が神経を圧迫している(黄色の部分)ところを図に標してあります。画像の下側は背中の位置、画像の上が腹部の位置になります。
 丁度、脊髄神経が左右両方に枝を延ばしていますが、これが左右の下肢に行く神経(坐骨神経、大腿神経など)です。

 腰椎椎間板ヘルニアの保存的治療

 なぜ腰椎椎間板ヘルニアの手術が限定して行われるようになったのか?いくつかの点をお話しようと思います。1つは椎間板ヘルニアの臨床所見で随核の突出による神経の圧迫は、時間の経過とともに落着き、突出した部分がマクロファージ細胞により処理され圧迫が改善される事が解ってきたからなのです。これにより臨床的に軽度であると診断されたヘルニアによる神経圧迫は保存的療法により経過を観察する事が多くなったからなのです。もちろんこうした事は近年私達の鍼治療の大いに活躍する場となっている事はこうした事情もあっての事です。
 もう1つは下肢の痺れの問題が術後にも残る事があるということ。患者としては、この椎間板ヘルニアで一番辛い事といえば下肢への痛みの問題ですから、術後にも同様な辛さが残ると手術は失敗したと思うという感想の方が大多数になってきます。しかし、医師の手術前の説明を思い出していただきたいのは、随核の突出の除去手術が主な目的なのです。
 長期に随核の突出によって圧迫を受けた神経は、圧迫を解除してもすぐさまもとの健康な神経の状況にはなりにくいためにこうした術後も下肢の痺れが残る事もあるのです。それは手術の失敗ではないのです。しかしながら、術後のそうした神経を改善させる目的で、私達の鍼治療はまた活躍の場を与えていただいております。
 こうした長期に渡り圧迫を受けていた神経や、老化のために神経が従来の新鮮さを失っていると術後も痛みとして残る事は何も椎間板ヘルニアのケースだけではありません。腕の神経や顔の神経にも同じ事が言えるのです。

 脊柱管狭窄症のオペ後の
下肢の痺れ。

<治療例>

 脊柱管狭窄症の診断を受け、手術が決まっていたAさんのお話を紹介します。
 私どもの治療院へは紹介でおみえになった人ですが、すでに半年以上この脊柱管狭窄症の症状に悩んだ人でした。もちろんその症状は下肢への痺れが強く、腰部の位置次第で下肢に激痛が走る典型的なタイプです。
 Aさんは私どもに今回の手術がある事を打ち明け、そして術前に自分の不安と術後の相談をじっくりとしたいとして来院しました。Aさんの最も心配した事は、術後に残る可能性のある下肢への痺れです。
 そこで私は下肢の痺れについてじっくりとAさんにお話いたしました。Aさんも整形外科の医師と同じ説明を受けた事を確認いたしました。手術前に私達ができる事は、下肢への血行の保持、痛みの緩和などです。
 無事に手術が終わり、Aさんは医師に説明を受けました。どうやら下肢への神経の状況があまりよくないとの事で、神経圧迫の除去はできたが、神経そのものがフレッシュな状況ではないとの事です。Aさんは退院後2日で、鍼治療に来院しました。もちろんAさんとの話は打ち合わせ済みですから、担当医にも鍼治療をすることを承認済みです。下肢の痛みは手術前より緩和されていますが、まだ残っていました。そこで鍼治療を開始しながら様子を見ると、下肢の痺れが落着き始めました。個人差があると思いますが、Aさんの感想は治療する度に楽になっていますとの事でした。現在は、まったく下肢への痛みはありません。手術は成功し、その後のサポートも上手に行えた例を紹介いたしました。
 ここで一番大切なのは、整形外科で除去できた脊柱管の圧迫所見です。圧迫が除去できたからこそ、こうして下肢の痛みの除去に鍼治療が活躍できたものと考えています。私は治療例をあげてコンテンツを書く事が好きではありませんが、皆様の参考に少しでもなればと思い、Aさんの勧めもあって今回この様なお話を書きました。

 脊柱管狭窄症の発病について

 脊柱管狭窄症は多く老化傾向の病気として話題になりますが、こうした神経圧迫ではその傾向において脊椎の変形や側弯、退行性の変化がそうした老化による要因と重なる事が多い為です。しかしながら、こうした事は老化だけでなく、事故や受傷の仕方において脊柱管を圧迫する脊椎椎骨の骨折においても同じ症状が出てきます。こうした診断などは、しっかりとした医師の検査において、確実に原因を追求して治療にあたるべきと私達は感じています。
 変形性のものは一ケ所に留まらず、数カ所の圧迫という事もあり、外見からはそうした箇所が全く解らないので、こうした原因追究は確実な検査をする整形外科に相談する事が第一だと思います。
 また、保存的療法を医師から勧められた場合には、鍼治療、マッサージ治療を加えて行く事をおすすめいたします。治療を計画的にすすめながら、担当の整形外科の医師と保存的治療の経過を診てゆく事が望ましいと思います。

 無闇矢鱈に治療へ行くのは危険です。

 この腰痛を軸にした問題は、非常に奥が深い問題です。こうした問題を手っ取り早く解決したいと思っていると危険な事が沢山あります。是非とも治療に際しても、しっかりとした医学的知識を兼ね備え、整形外科の先生と一緒になって診てくれる鍼治療院、指圧マッサージの治療院を選ぶ事が大切です。
 とかくインターネットでは良く治るような記載や書き込みが多いものですが、私達は日頃から簡単に治る疾患など一つも無いと考えています。医療機関にとってすぐに治る患者は良い患者、なかなか治らない患者は悪い患者という様な態度で辛くあたられたという人の声が多く寄せられています。

 今回の脊柱管狭窄症については、患者さんやその家族の人のすすめもあってコンテンツに加えました。あまり症例をあげる事が好きではありませんので、今回は特別です。私達は簡単に治る疾患など一つも無いと考えています。ゆえに、丁寧に治療計画をたてながら皆さんと共に治療に望む姿勢でおります。また皆さんのおかげで、こんた治療院はこうしたコンテンツを作成できる事を感謝しております。




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