顔面神経麻痺
 顔面神経麻痺を考える 5 
 後遺症について 総論     こんた治療院

 今回のお話は、顔面神経麻痺の後遺症についてのお話です。顔面神経麻痺の患者側にとっての最大のポイントは、後遺症といっても過言ではありません。医療側にとってはその原因追究が主たるもので、症状が落ち着くと神経麻痺の回復がどれだけか評価表をつけるだけの作業の様子。『調子はどうですか?』と聞かれ、答えると『これには時間がかかりますからね〜っ』という返事。
  本当にこんな事で神経は回復するのか?自然に回復するのか?…。みんなのメールの叫びが私の心をゆさぶり、今回のUPとなりました。
 

顔面神経麻痺における後遺症について 総論
 

 顔面神経麻痺の後遺症として説明をするためには、その後遺症名をあげるだけでは皆さんの不安をあおる事になりかねない、とはいえのんきに考えているものでもないので、ここは一つ私なりの説明で書いてゆこうと思います。
 当然、神経の麻痺ですからその支配する筋肉、器官の不具合をもってして起こる事ですが、合併して起こる問題もあります。合併症とは、例えば閉眼ができずに眼の炎症が起きて赤くなる(兎眼とがん)や眼球の傷などが合併症に当たります。
  顔面神経麻痺の後遺症という言い方も、実は原因名を先につける事によりもっと説明し易いものになるのです。つまり、ラムゼイハント症候群における末梢性顔面神経麻痺の後遺症とすると、その考えられる後遺症の候補がしぼられてくるのです。また、不全麻痺や完全麻痺の様に神経の損傷レベルが解ると、さらに今後の予後の見込みがおおよそ解る事もあって、患者さんに対しては不安をあおる事無く、その患者さん事に個々に説明ができて安心を受け取る結果にもなります。
  しかし、ここでお話しする事があるのですが、神経の損傷レベルの判定には非常に現代医学では曖昧な判定が多いという事です。筋電計を用いていても、決してその値の信頼度は高くないと私は考えています。そのために、説明は精彩を欠き、皆さんを納得のできない不安状態にさせているのです。インターネット情報も流通して20年ほどになると、自分で病気の事を調べる事が簡単にできる時代になってその内容もかなり詳しくなっていますが、神経という組織の病的状態を完全に把握できる機械は、未だ世の中に出て来ていないのですから、先生のお話も上手にはできないのは致し方ないという所でしょう。それでは 私の神経損傷レベルの考察はどうしているのかという事を、コンテンツ20<不全麻痺と完全麻痺>にて書いております。
  その神経の損傷度は、皆さんが心配する後遺症と密接な関係があります。この神経の損傷が軽度である場合は、その後の後遺症の心配が非常に少ないものです。極端にいえば、神経麻痺と診断されたが数週間で動き始め1ないし2ヶ月で完全に動いている状態である。こうした状態の神経の損傷レベルは、神経伝達機能の不具合のみで細胞組織の再生修復箇所が極めて少ないものである場合です。これを私たちは不全麻痺といっています。ベル麻痺と診断された方の8〜9割に相当する方がこうした不全麻痺の状態です。
 神経の損傷が重度である場合は、後遺症である病的共同運動などの後遺症が出る可能性が非常に高まってきます。神経の動き出しまでに3ヶ月以上かかっている状態は、神経組織の再生修復に時間を要した結果であり、損傷が再生できない箇所も生じたくらいのダメージを神経に与えられた可能性もある場合を完全麻痺と言っています。この完全麻痺に陥るケースは、ラムゼイハント症候群の場合は非常に高確率にあり、水痘ウィルスの再活性化によるものであり、顔面神経のみならず、三叉神経(顔の痛み)、反回神経(声がれ声帯麻痺)、前庭神経(めまい)への影響も神経総合症として起こって来ます。
 こう書くと、ベル麻痺ならば後遺症の問題は無いのかと思われ易いので、そうではないと否定しておきます。ベル麻痺であっても後遺症の病的共同運動は出てくる可能性は充分ありますし、ラムゼイハント症候群と診断されても麻痺の回復が非常によい場合もあります。要するに原因はどうであれ、神経の損傷レベルが低ければ後遺症への問題も少なく、神経組織の再生修復が順調に行われるのであって、問題は神経の損傷レベルであると私は考えています。

 
顔面神経麻痺における後遺症について 各論集
 

 各論に関しては、コンテンツをUPすることで細かく説明してゆく事とします。レアケースも含めて、様々なケースをこれからも書いてみたいと思っていますが、なにせ仕事の合間にする作業ですので、スローペースですいません。

 
 
 後遺症各論に相当するコンテンツの紹介
後遺症名
コンテンツ
内    容

病的共同運動

顔面神経麻痺を考える6
 後遺症編 2 
病的共同運動を回避する

病的共同運動の簡易説明

病的共同運動

顔面神経麻痺を考える6.1 
後遺症編 3 
病的共同運動を考える

病的共同運動への対策事項各論

病的共同運動

顔面神経麻痺を考える8 
顔面体操や顔の運動について

病的共同運動への対策事項各論

病的共同運動

顔面神経麻痺を考える15 
ホウレイ線 について 

病的共同運動への対策事項各論

病的共同運動

顔面神経麻痺を考える17
末梢性顔面神経麻痺の神経再教育

病的共同運動への対策事項各論

病的共同運動

顔面神経麻痺を考える21
随意運動と不随意運動

病的共同運動への対策事項各論

 

顔の痛み

顔面神経麻痺を考える10
顔の痛み 三叉神経痛

ラムゼイハント症候群、帯状疱疹、水痘ウィルス

アブミ骨性耳鳴り

顔面神経麻痺を考える12
トリックモーションと共同運動
アブミ骨筋性閉塞性耳鳴り

難治性の耳鳴り

コンテンツが増える度に随時エントリーします。
 

メール相談などで気になっていた事
 
顔面神経麻痺になって半年。いっこうに動かない。
 
 

 このようなケースは非常に多くメールをいただきます。もちろん私は鍼治療をすぐに勧めます。でも正直その人が鍼治療へ行ったかどうかは判りませんが、半年間もの間に回復への可能性が低下している事実は、私たち治療する側にとって大きなハンデになります。すぐにでも鍼治療を開始してほしいと思うケースです。またこのハンデをどう乗越えて回復させてゆくかは、治療家と本人の2人三脚になってきます。2人三脚とは互いの信頼と努力がまずは麻痺を回復させる為の第一条件であるという事です。
 なぜこのような至極あたりまえの事を記述するのか? メールでの相談をまとめると、すでに鍼治療を開始している患者さんの中では、相談先の先生の対応が悪い、麻痺が一向に変化がないと次第に先生の説明が重い口調に変わる。全く先生の説明がなく、治療には長くかかるとしか話してくれない。治療経過の説明があやふやである。といったメールの内容が多く相談に見受けられます。もちろんメールをいただくのは患者である本人ですから、話は一方的になりがちですが、少なく見積もってもこういった内容が相談によせられるのは事実です。そして私は必ず本人と担当の先生の信頼関係の修復にまわります。というのも、その相談者を直接診察しているのが私ではないからです。
 この事から、顔面神経麻痺のより良い治療環境が必要であると思います。治療家の技術の向上だけでなく、患者のケアをしっかりとできるそんな環境がもうひとつこの顔面神経麻痺治療には必要なんだと思います。つまり2人三脚ができているかどうかが、長期治療のポイントであると思います。まだ鍼治療を始めていない人は、この点を注意して治療院を選ばれてはいかがでしょう。

 
 
原因によって回復が違うのか?
 
 

 顔面神経麻痺は原因によって回復が違うのか?という質問がありました。私の答えとしては臨床上からはYES!とはいえません。多くのケースに関わってきましたが、原因によって麻痺の回復が早かったと言えるのかは疑問です。
  手術後のケースや、ラムゼイハント、サルコイドーシス、外傷性、原因不明など総てのケースの原因別回復傾向は、臨床上難しい分別だと思います。というのもどういうわけか私のところへ治療に来るケースは、ほとんどが過去においても原因に関わらず重症なケースが多かったからです。もちろんその事を受けて<顔面神経麻痺を考える>を作成したのです。
 私の臨床上の経験からの話をすると、その回復のキーポイントは神経麻痺を起こした部位の最上部がどこかによると考えています。それと併行して麻痺が解除され始めた時間にターニングポイントがあると考えています。
 理科学的検知からは、神経の損傷の程度によって回復に要する時間が必要である事、この事についてはコンテンツの〈顔面神経麻痺を考える20 不全麻痺と完全麻痺〉にて詳しく説明しております。
 それ故に神経回復のための鍼治療は早期に行う事を提唱しているのです。そして、そこを攻めきれるかが私の技術にかかってきています。誰でも麻痺が残るのは辛いですから、私も全力で治療を注ぎ込みます。しかし、安易に治りますから大丈夫と言えなくなったのは、様々なケースを治療してきたからだと思います。
  もう麻痺は残っていませんと一日でも早く言ってあげたい気持です。

 
 
回復が早い人はどれくらいで動き出すのですか?
 
 

 では、早く回復した人のケースでは4週間というものもあります。このケースでは非常に印象深く覚えております。原因は不明とされて、ステロイド投与が始まりました。麻痺の程度は完璧に動かなくなっておりました。ステロイド投与が終わり一週間が過ぎたころ、眼瞼に動きが戻ってきました。すると一日毎にその回復がめざましく、3週間目にはほぼ神経は回復して顔面の筋肉を動かしていました。私のハイスピード回復のケースはこういったものですが、これは入院中から治療できたのでそういうケースに遭遇できたのだと思っています。早期回復のケースはこのように数週間で神経回復するものもあるという事です。もっとも、インターネットや治療院を捜してお電話をいただくケースでは、こうした処置後も回復してこないケースがほとんどなのは承知しています。

 
 
回復が遅い人、リミットはいつか?
 
 

 回復の見込みのリミットは1年を境に低下して行きます。その間に鍼治療を続けていると回復の見込みは継続できていますが、何も治療していない状態でいると回復の可能性が極端に低下してくると思います。これは私が臨床においての経験からのリミットです。では1年を過ぎたものは回復しないのか?という質問には、その回復する為の条件が満たされなくなることは事実であり、その条件が満たされれば回復という結果が起こるという事です。条件とは神経の再生が可能かどうか?神経の変性が起こっていないか?支配筋の筋萎縮の状態など、回復のさまたげになる種々の問題の解決ができているという事です。
 そうした状態を克服して神経回復のためのアプローチを続けたものが1年を超えて回復できたものと思います。ならば遅くとも鍼治療の開始を半年以内に始める事が回復の可能性を残す事になります。
 この件に関してもコンテンツとしてまとめています。〈顔面神経麻痺を考える18回復の徴候〉顔面神経麻痺を考える19回復の条件〉です。

 
 
顔面神経麻痺の顔のマッサージが参考になった
 
 

 毎日、顔面神経麻痺の顔のマッサージ<顔面神経麻痺を考える2 ケア編>をネットで出しながら顔のマッサージをしているという方が沢山いらっしゃいます。簡単な方法ですので是非とも行ってみてはいかがでしょうか?毎日こつこつとする事はとても大切な事です。

 
顔面神経麻痺を考える5のまとめ
 

 この顔面神経麻痺を中心にして、できるだけわかりやすく皆さんにいろいろな事をネットで伝えようと思い、作成すること令和5年で14年の月日が経ちました。えっ?もう14年も経過したの?と書いている自分にもびっくりです。神奈川県小田原市のちっちゃな田舎の治療院ですが、今も遠くから来院していただいて私は本当に頭の下がる思いです。そして来院した方々の日々の努力に更に感動を覚え、私も教えを受けながら毎日を過ごしております。
 麻痺と戦っている人を一人でも多くサポートしたいというのが私の願いであり、思いでもあります。病気をやっつけにゆく!その手助けをするのが私の仕事と考えております。
 インターネットを通じてメールをいただいた方も、同じようにこんた治療院に受診した方と同じ気持で今でもメールを交換しております。そういった方々が回復した知らせが届くとうれしくなってしまいます。毎日メールが届くと楽しみに拝見しております。そうした皆様のお力をお借りしながら、今日までこの『顔面神経麻痺を考える』を成長させていただいたものと深く感謝しております。
 私の麻痺退治はこれからも皆さんのお力をお借りしながら、さらなる意気込みでがんばってゆきます。皆さんのお役にたてるように、知識に、技術に磨きをかけてゆきたいと思います。また、相談メールなど ありましたら送ってくださいませ。 
         

 


シリーズ 顔面神経麻痺を考える

 このフレームをご利用いただくと、コンテンツ1〜総てまでの閲覧が便利です。

 顔面神経麻痺を考えるtop

 顔面神経麻痺のケアについての特集をしています。お口の体操やマッサージの仕方を載せてありますので、御覧になって下さい。

 顔面神経麻痺を考えるをUPしてから、皆さんからの相談メールが連日の様に届きます。その中には、実は自分の子供、親や兄弟、友達や恋人を心配してどの様にケアしてゆくのか?どう接していったらよいのか?という本人以外の人の問い合わせも多いのです。
 そこで、私が顔面神経麻痺になった時の経験を生かして、お互いにどう接したらよいのかを考えてみました。

 皆様の疑問や相談に関してもっとも多かった内容をピックアップして考えています。それにより少しでも皆さんの不安要素の解決につながるお手伝いができたらと思います。

 顔面神経麻痺の後遺症についてのお話です。顔面神経麻痺の患者側にとっての最大のポイントは、後遺症といっても過言ではありません。医療側にとってはその原因追究が主たるもので、症状が落ち着くと神経麻痺の回復がどれだけか評価表をつけるだけの作業の様子。『調子はどうですか?』と聞かれ、答えると『これには時間がかかりますからね〜っ』という返事。
  本当にこんな事で神経は回復するのか?自然に回復するのか?…。

 顔面神経麻痺の回復期に起こる共同運動についてのお話、後遺症についての第2弾です。顔面神経麻痺を考えるを執筆する様になって、平成13年の11月にUPした顔面神経麻痺についても今回で6枚目のUPになります。
 病的共同運動については当時からたくさんの質問メールが届いていました。来院される患者さんにも質問を受けてお話をする事も当然多くありました。そんな病的共同運動についての問題は非常に複雑な内容です。

 なぜ?低周波や顔面の運動(自動運動)を推奨しないのかを書きました。実質的に後遺症についてのお話で第3弾です。小児の顔面神経麻痺と合わせてみていただくと理解しやすいと思います。
(H18.3.10up)

 小児の顔面神経麻痺についてケアを中心に書きました。子どもの辛さを具体的に生活を通じての御両親へのアドバイス事項です。大人が子どもの辛さを理解する事で、顔面神経麻痺をやっつけるための内容です。(H18.3.5up)

 顔面の体操や運動はいけないというお話です。顔面神経麻痺を考える6の問題で病的共同運動を強調させる事なく、回復の経過をみつめる事が重要であると考えています。(H19.3.22)

 顔面神経麻痺になったら、ポーカーフェイスで過ごせという指導に疑問あり。心の問題も抱えるこの病気に、更に追い打ちをかける事は許されない!(H19.5.26)


 顔面神経麻痺に出てくる顔の痛みについてのお話です。発症時から出てくる痛みと神経回復と同時に出てくる痛みのお話です。発症時から出る顔の痛みは大勢の人が訴えますが、その痛みはすぐに加療とともに落着いてきます。しかし、三叉神経痛として痛みの出るケースもあるのです。(H19.9.24) 

  顔面神経麻痺を考える<番外編>です。
 (H19.10.27)

 アブミ骨筋性の耳鳴り(閉塞感をともなう)について書いています。(H19.12.14)

 顔面神経麻痺になった、妊婦さんや産後のお母さんのためのコンテンツです。(H20.1.14)

 小児の顔面神経麻痺2。生活指南と小児の顔のマッサージを書いています。

 病的共同運動の強調と顔の運動による各筋肉の強調などを考えてゆく上で、こうした状況を少しずつお話ししてゆきたいと思い書いてみました。(H21.4.1)

 ベル麻痺(原因不明)と診断を受けていても、経過の観察次第では違ってきたということもあります。こうしたケースなどは受診した科によって初期診断、検査方法が違う為に起こってきます。私たちは2度とこの麻痺を起こさない様にする為に、自分の麻痺の原因を追求せねば予防には繋がりません。(H22.6.6)

 末梢性顔面神経麻痺の神経回復時における、病的共同運動の強調をおさえること、これすなわち神経再教育の仕方をどうするかという事を考えなくては治療に結びつく事をができないというお話です。(H22.12.20)

  私の臨床における主観的内容です。麻痺した神経が動き出す前に回復しているとなぜ解るのか。(H23.9.1)

 末梢性の顔面神経麻痺を回復させるために必要な条件を考えます。(H23.12.2)

 末梢性顔面神経麻痺の不全麻痺と完全麻痺について書いています。(H24.6.16)

 顔を動かすという筋肉 表情筋。その表情筋は随意運動と不随意運動の2つからなる運動を表現している。 (H25.11.21)

 水痘ウィルスに関して、私流の解説をしています。(H26.6.18)

 こんた治療院の治療室で、皆さんとお話している事など書いてみました。(H26.10.22)

 食生活について書いてみました。(H27.2.16)

 顔面神経麻痺を考える25  顔のしびれを伴うもの 三叉神経の損傷による知覚障害(H30.4.25)

 鍼治療と顔面神経麻痺 1 (R1.10.7)

 鍼治療と顔面神経麻痺 2  (R2.10.)

 顔面神経麻痺を考える28
 
原因編2 コロナウイルス関連で引き起こされる問題
 (R5.7.31 up) 
 私自身も、この目に見えない得体の知れないストレスにもちろん困惑した事もありますし、他人から見れば何だそんな事と思われる内容であったと思います。いま冷静にその時の状況から分析すると、自分から見ても小さい事であったと認識しています。
 ではなぜそのような事をストレスとして受けとめてしまったのか…、をまずは初めに考えて行きましょう。
 顔面神経麻痺について専用掲示板(BBS)をもうけました。いろいろな事をみんなで話し合えるところを作ってみました。顔面神経麻痺を考えるを読んだ後にでも立ち寄って下さいませ。
  たくさんの人の書込みありがとうございます。みなさんが心から勇気が持てる掲示板になりました。本当に感謝いたします。
 鍼治療が苦手だという気持ちは充分解ります。
ご相談などありましたら、<治療の窓>にメールボックスが設置してあります。





当サイトに掲載のイラスト・記事・写真などの無断転載、無断使用を禁止します。
Copyright (C)2023 こんた治療院 All Rights Reserved.