このコンテンツで、顔面神経麻痺に関する項目が27項目になりますが、他の神経麻痺に関する項目が7項目あります(令和5年4月現在)。なぜ、この様に神経麻痺の項目が多いのかと言えば、私の治療家としての経歴にあるといえます。私が麻痺という病気に出会ったのは、1989年中国北京にある北京中医学院(北京中薬大学)の進修科に在学していた時でした。鍼治療の臨床医療現場は、私の日本での東洋医学の知識を一瞬で踏みつぶされ、新たな中国医学の臨床と理論の応用を実践せよと私を奮い立たせる原動力になりました。もっと分り易く言えば、特に神経の麻痺に鍼治療がかなり有効であると自分の目で見て実感したという事です。
私は北京での留学を終えると、日本の総合病院での就職がすぐに決まりました。といっても、当時の理事長、院長らによって私を日本の病院で受入れる体制を整えていただき大変感謝している事を今も尚忘れずにいる次第です。そして、このプロジェクトは当時、一大センセーショナルを起こしたプロジェクトでした。脳梗塞や脳出血の患者を集中治療室から鍼治療をして行くというもので、中枢神経麻痺の鍼治療の最先端を担っていました。テクニカル
アドバイザーとして、中国天津中医学院第一附属病院(天津中薬大学附属病院)から医師が2名づつ交代で来日して勤務し、私たちスタッフの技術の向上にも怠りのない様になっていました。というのも、この治療法には特殊技術が必要であり、私は最終的に技術習得のために、天津に研修医として3ヶ月出向して勤務して完全なものとして習得してきました。お世話になった中国の先生方は、臨床現場でも医学論文でも老中医と呼ばれる名医の先生方です。今でも先生方の著書は大切に所有しています。やはり、鍼治療は高等な技術をもって臨床に望まなくては、その効果は至極一般的なものに留まってしまうのだという事を、数年かけて自分の目で見て体験して来たというお話です。
総合病院での経験は、中枢性神経麻痺に留まらず、末梢性の麻痺にも当然携わる事も多くありました。顔面神経麻痺、橈骨神経麻痺などは日常に治療の取り扱いの対象です。また、各科オペレーション後の問題にも鍼治療が導入され、その効果を期待される部所でもありました。結果を残す事、これすなわち西洋の医師に医療である事を認めさせる事にもなるという事です。もちろん、その為には各種検査結果に基ずく改善の評価、他覚的評価をもって鍼治療の効果を医師と共に行ってゆく作業が必要です。そうした環境下で、スタッフ全員が着々と成果を上げてゆく事で院内の医師からは、鍼治療って効果があるんだという事を知ってもらう事が出来たと思っています。がしかし、その効果を見ようともしない医師からは無反応だった事もよく知っています。
鍼治療は、神経麻痺の治療法として、とても重要な方法である事を私は知っています。それが言いたいだけの長文でしたが、みなさまの心へ届く様に願うばかりです。