顔面神経麻痺
 
顔面神経麻痺を考える18
 
神経の回復の兆候  こんた治療院

 このコンテンツをアップするに際して、まず私の臨床における主観的意見であるということを申しておきます。それは臨床経験40年における確信に近い印象で、毎日の様に麻痺した神経と向き合っている私の主観から出た答えのいくつかを、今回『回復の兆候』と題して執筆したいと思います。


 なぜ?麻痺した神経が動き出す前に
  回復していると確信できるのか

 それは鍼治療した後に生じる、麻痺側の皮膚の温度の上昇、皮膚の張りと微弱な筋緊張、涙の量、その他多数、などにその答えがあります。そしてその状態は、不全麻痺なのか完全麻痺なのかを見極める事にも役に立ち、私にとっては非常に参考になる結果を治療直後に確認できます。更に私はその確認の為にも、鍼治療の直後にマッサージを施し、施術した部位の状況を自分の手で確かめて、その状態のランクを自分に記憶してゆきます。
 皆さんには、なぜ?記憶するのか?患者さんに話を聞かないのか?という疑問があるでしょう。その答えの1つとして乳幼児または言葉の使えない小児の診察には、自身の触診診断能力を使う事が臨まれ、その評価は自身の持つ経験からの高い診察能力を問われ、触診の評価は1つの根拠を持つ事柄であることが解ります。そして、記憶を頼りにその触感をランク別に分けてゆくのです。
  また、もう1つの答えとして末梢性の神経麻痺の場合の評価法における神経の回復の評価は、筋肉の運動がなされているかどうか?に着目点がおかれているために、筋肉の動き出す前の外見での所見評価は総て0(ゼロ)評価な為に、筋電計計測で補いをつけています。
  私には筋電計を操る事ができないので、自分の触診に頼るのみです。という訳で、カルテには事実上は動き出す前の神経そのものの状況は、筋電計の数値しか書けないのが現状ですから、記憶としての価値を高める事は私にとって絶対の条件になります。
 また、そうした神経の回復状況に着目して触診を重ねていない場合、ただ外から診察して動いているのかいないのかだけを診ていては、みなさんの一番気になる 何時動くのか?など一番知りたい事は、教科書どうりの一般的な回答で終わりです。
 現代の医療において、こうした触診の技術を磨かずに、ただ診るだけ、ただ鍼を刺すだけの治療では、患者さんを単に多くさばいているだけで自分の本当の経験値を上げる事にななりません。多くの患者さんが臨んでいる事は、自分の場合どうなのか?を担当の先生に聞きたいに決まっています。
 そのために先生という職業があるのですから。

 神経の回復は、基本(教科書やインターネットなど)どおりではない。

 神経回復は根本的に神経がどれだけのダメージを受けたのかにかかってきます。つまり、ベル麻痺は数ヶ月、ラムゼイハント症候群はそれ以上の月日が かかるという事に惑わされてはいけないという事です。
 ベル麻痺であってもかなり長い間 動かないケースもあり、ラムゼイハントで耳の中に明らかに水疱が出ているケースでも1ヶ月で回復したケースもあり、こうした事例をふまえて、私はいつも慎重に診察を重ねて治療にあたります。もはや、顔面神経麻痺の教科書の常識は、私にとっては必要の無いものになっています。私にとって必要なのは、個人個人の神経のコンディションを診る事で、その生きた状態を観察する事が次のステップへ策を立てるための足掛かりとなるのです。
 実は次回の『顔面神経麻痺を考える19』は、神経の回復の条件と題してすでに、同時進行で執筆しており、皆さんがあまり馴染みのない内容だとは思いますが、生きた状態の観察という言葉にその内容が大きくかかってきます。
 この私の執筆している、顔面神経麻痺を考えるは最終的に鍼はなぜ?神経麻痺に効果があるのかを書く為に、その説明のための前置きの長さに、はたして、あとどれくらいの時間が必要なのか挑戦です。しかしながら、医療の現状にメスを段々と入れはじめて来ているので、さらに具体的に説明をしなければと思っています。

 回復の途中に神経のダウンがみられる

 順調に回復の傾向を見せ始めた神経再生であるが、その回復速度が顕著に落ちたという事を何度か経験しています。その原因はよく解っており、早期に指示して、もとの回復の波に乗せる事をします。 そのケースを1つだけ例を挙げてお話しいたします。
 正常な筋肉は、正常な神経の働きによってその筋肉の仕事を全うしますが、運動神経麻痺の場合は神経再生とともに微弱な筋運動が出て来た段階で、同時進行で筋疲労を伴っているという事を忘れてはならないという事です。そして、顔面神経麻痺のケースでは、この微弱な筋運動に対して更に追い討ちをかける様な顔の運動や低周波による強制的な他動運動による治療は、その丁寧さに欠け、まさに筋疲労を生じさせる可能性が非常に高いのです。
 神経の再生がまだ筋肉を動かしていない状況下の中で、ジムトレーニングを行ったケースではこうした神経の再生傾向のスピードをダウンさせた状況を診ています。ただちに止めさせる指導をしましたが、すでに麻痺した筋肉は疲労を起こし、周囲の正常な筋肉へも凝りという形でその影響が大きく出ていました。無意識的にも麻痺した顔の筋肉を動かそうという神経伝達を行っているのが顔の神経、顔面神経ですので、その一般的筋疲労に更に加えての疲労は、回復にとっての条件の妨げになります。
 さて、筋肉の疲労の更なるお話ですが、皆さんの瞼(まぶた)は1日どれくらいのまばたきをするがご存知でしょうか?正常なまぶたは、1分間に約20回前後です。1日の割合ですと約1万回前後も動かすそうです。そうした負荷が、麻痺側のまぶたに無意識にかかっていることを考慮に入れて考えると、皆さんの、まぶたの筋疲労がどれだけのものか少しは想像がつくかと思われます。
 加えて、仕事や家事、学校の勉強で 総体的にも身体の疲れが出てくるのは当然です。ですから、帰宅後は充分なケアが必要になってくる事は当然であり、そうした疲労も回復させる事が神経再生にとても重要になってくるのです。顔のマッサージは、最低でも必要なことですね。
 そして、この様な状態に陥らない為にはどの様なケアを加えて、それによってどのような効果があったのかを診てゆく事で、回復の傾向を診てゆきます。治療直後にそうした筋疲労の改善が診られている場合は、順調な回復を示しているといえるでしょう。
 私は患者さんだけの感想では納得いかないタイプですから、自らその効果があるのか無いのかを探りに行く事は日常の臨床では随時行っている行為です。 こうした麻痺した神経が支配する筋肉の緊張具合を、しっかりと管理することは至極あたりまえの事ですが。

 神経が動き出す前に回復していると解ること

 神経が内部より回復しているという兆候は、失った機能の回復がキーポイントであり、その失われた機能は個人により様々であるが、一般的に味覚の回復や反響音の低下などがその兆候である事です。他の兆候に関してはまだまだありますが、こうした現象を鍼治療の後に患者自身が感じる事ができれば、鍼治療の効果を認めざるをえないと思います。どんな小さな事でもその変化は神経の再生への回復兆候であれば、みなさんの気持ちの変化に大きく変わりを見せる事でしょう。
 神経が動いたか否かではなく、その前に確かに再生がスムーズに行っているのか、いないのかを診てあげることこそが、精神的にもこの先長い間、回復の時間を待ちわびて過ごす患者さんには必要なのだと私はいつも思っています。だからこそ、発病初期からの経過観察は私にとっては非常に大切であると思っています。そして、その重要性のお話は、次回のコンテンツでの『回復の条件』というお話に持ち越しです。



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 こんた治療院 <治療の窓>より抜粋しました。
 毎日、診察の合間にコツコツと執筆しながら早23年が経ちました。皆さんに1つでもお役にたてる事がありましたら、幸いと思いながら、今も尚治療の合間に書き続けている内容です。全国の方から色々な御質問などいただき、毎日心を込めて返信しています。そうしたみなさんの力で、今日まで一生懸命やっていて良かったと思うのは、インターネットのすばらしさの1つだと考えています。

 シリーズ
 顔面神経麻痺を考える

6.1 後遺症各論
<病的共同運動の強調>

7 小児の顔面神経麻痺
:ケア編

8 顔面体操と
顔面の運動は、
やってはいけない

10 顔の痛み 三叉神経痛

21 随意運動と不随意運動

23 やっつけに行く
今回は、
鬼軍曹の
独り言ですか?


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