顔面神経麻痺
 顔面神経麻痺を考える14 
 小児の顔面神経麻痺
 小児の日常のケアについて
 小児のマッサージ治療の仕方
  
           こんた治療院

 小児の顔面神経麻痺は、子供もさることながら親も同じ様な苦悩を持って生活するようになり、私の所へはそうした家族が日増しに増えています。私もそうした親と同じ気持ちで、我が子のようにそうした子供たちを支えたいと思っています。そして、そうした子供に治療をするとともに、そうした子を持つ親の負担を、心の負担を私が少しでも減らす事ができるのならば、このコンテンツが役に立つのではと思います。
 小児の顔面神経麻痺を考える7を執筆してから、小さなお子さんが全国から来てくれています。今回はそのみなさんが心配して相談してくれた内容など補足して行きながら、そうした子供の生活指南を書いてみたいと思います。


 子供のケアについて
 顔面神経麻痺 乳幼児の発病

 乳幼児の場合のケースでは、実は気がついたら顔が歪んでいたという発病日が特定できない子供も少なくはありません。毎日子供を見ているのですが、顔が歪んでいると気がつくのは発病してから数日あるいは数ヶ月経過してという場合がかなりあるのです。また出産後の始めての検診で指摘される事もあります。乳幼児の検診で気がつくケースはこうした発症日が特定できないという事が非常に多いのが現状です。
 なぜ?気がつかないのか?それは乳幼児は表情が確立されていないという点とおっぱいを吸う事ができるのでそうした点があげられるのです。唯一気がつくのが泣いた時なのです。しかしながら、泣くというのは大概に空腹やおしめの時なので見逃しいやすいのです。
 ですから、母親であるみなさんが自分を責める事などしなくても、それは仕方のない事なんです。ましてや神経麻痺などかかるなんて夢でも思ってもいないのですから。

 こうした乳幼児の治療

 小児科では早急に治療を施したいのですが、こうした発病時期のずれなどから踏み込みたくとも、なかなか思うように行かないのが現状です。というのも、診断においてベル麻痺やラムゼイハント症候群とわかっても、ステロイドや抗ウィルス剤を投与して効果がみられるとされる期日は発症後1週間以内、2週間以後はおおよそ症状を観察するといった程度です。
 顔面神経麻痺を考える7<小児の顔面神経麻痺>にて大凡の注意事項は書いたつもりですが、ご両親がこれからそうした子供をケアする上で必要であろう事をさらに詳しくまとめる事で、医師のいうところの「しばらく様子を見よう」という言葉をより具体的にしてゆきたいと思います。

 乳幼児の顔面神経麻痺 
  自宅でケアする方法

 まず、ケアする子供の状況を親が知る必要がある。

 発症後間もない場合では、耳の後ろや顔、または頭痛などといった痛みの症状が出ている子供もいる。そのために子供はぐずる場合が多い。こうした痛みは鈍痛で、子供本人はぐったりとしている状況です。こうした状況は大概、発症後1週間で軽減傾向にあり2週間ではほぼ消失してくるものです。ですから、家で安静が必要です。病院で入院という時期でもあると思います。
 発症後2週間以上経過している場合では、麻痺の回復が早ければ見て取れますが、そうした早期回復もできない子供は閉眼(眼を閉じる事)ができない、反響音がしてびっくりしやすい(アブミ骨の不安定により)。逆に聴力が低下して反応がにぶい(難聴を呈しているケース)。お水をコップやストローで飲めずにこぼすといった具合です。

 ケアを具体的にして行きます。
 <家の中での生活>

1.
 1日3回のマッサージを子供にしてあげましょう。マッサージの仕方を載せておきます。
2.
 目薬を医師の指示に従って頃合いを見て、目薬をさしてあげましょう。軟膏タイプの目薬は保湿力に優れているので、すぐに眼が乾く様でしたら医師に頼んで、軟膏タイプの目薬に変えてもらいましょう。
  時々、眼球に傷がないかを眼科の医師に診てもらいましょう。傷があったとしても、目薬をさす事で傷は治ってきます。
3.
 眼をこすらない様にお家で工夫をしてください。
4.
 日中は日当りのよい部屋に寝かせておくと、眼に紫外線が入るので日当りを避けましょう。
5.
 テレビやオーデオの音量はあまり大きくしない様にしましょう。
6.
 お風呂はシャンプー等が眼に入らないように、乾いた柔らかいタオル(ガーゼ)を用意して、眼が濡れたら拭きながら眼を保護しましょう。また、耳の中にも水が入らない様に注意が必要です。
7.
 歯磨きは麻痺側の場所に注意です。食べたものが麻痺側によってきますので、
  食べかすが残りやすいのです。

 <外出時の注意事項>

1.

 冬の外出は外気にさらす状態を極めて避ける様にしましょう。大人はマスクを推奨しています。

2.

 夏の外出は海やプール(自宅での水浴び)は、発症後3ヶ月は行かない方がよいでしょう。まだ閉眼ができていない時には無理があります。 砂や泥が眼に入る事もあります。
  大人はサングラスを推奨しています。

3.

 ママのお使いなどのつきあいは短時間にすませて、散歩は陽の強い時には避けて、つばのついた帽子をかぶせましょう。閉眼ができる様になればもう大丈夫です。

4.

 お散歩は気分転換にとてもいいのですが、上記の点などに注意が必要です。
  特に眼に気を使って下さいね!

5.

 外出から帰ったら手を洗って衛生面に気をつけましょう。


 <食事について> 

1.

 子供が好きなものならば特にだめという内容のメニューはありません。普通の離乳食でいいんです。

2.

 ビタミンB12が神経の再生に必要なので、そうしたものを含んだ食材を食べさせる事もよいと思います。
  ビタミンB12はあさりに多く含まれているので、そうしたものを取る事もよいのではと思います。

3.

もちろん、授乳だけの赤ちゃんはママのおっぱいは 栄養満点ですから問題はありません。

※さらに食品に関して、詳しくは〈顔面神経麻痺を考える24 食生活〉にて解説しています。

 <麻痺中の風邪等の病気について> 

 特に顔面神経麻痺だからといって、感冒やインフルエンザが麻痺を悪くすることはありません。
 一番の注意は、おたふく(耳下腺炎)や中耳炎などの耳鼻科系の問題です。こうした時には、すぐにかかりつけの耳鼻科の先生に診察をしていただきましょう。中耳炎は耳垂れをともないますが、多くは子供が耳の中に手を入れるなどの動作で気がつきます。


 乳幼児、小児の顔の
マッサージケアの仕方

 このマッサージは、私が子供に治療として行っているパターンの1つです。最低これだけはやっておきたいというマッサージです。初めはぎこちないマッサージでも、慣れてくると案外簡単にできるのでやってみましょうね!トータル7〜8分がマッサージの時間の目安です。

マッサージは親が子供の頭の方に回ってから行うと施術がやりやすいのです。以下の図では赤ちゃんの顔をわかりやすい様に逆さにします。

左の赤ちゃんの顔ののマークがポイントです。

マッサージは眼球を傷つけないように注意して下さい。

赤ちゃんのマッサージは大人の様に筋肉をぐりぐりと動かさないのがポイントです。やさしく肌を軽擦(軽くさする)マッサージするのがポイントです。

 

 まず赤ちゃんのご機嫌取りから始めます。コツは「イナイナイば〜あ!」の要領で、子供の治療への恐怖感を取っておきます。まずはこうして遊ぶのだという事を教えます。

 子供が慣れてきたらマッサージを始めます。しかし、子供はちょっとおもしろくなくなると、すぐにぐずるので、またあやして興味を引き、次の手順へと進んでゆきます。初めは根気がいる作業ですよ!

 手順1 顔全体を軽擦(軽くさする)

 子供の顔の両側を、親指や人差し指を使って擦ってゆきます。赤の矢印は人差し指や中指(2本を使ってもいいです)。青の矢印は親指を使います。慣れてくると、なるほど使いやすいと解ってきます。

 矢印の方向へ向かって擦ってゆきます。両手同時に動かす事でリズムが生まれて、赤ちゃんも気持ちがいいのです。各線を3回さすって一呼吸おいてそれを1回繰り返します。

 

 赤ちゃんのご機嫌を取りながら、左右同じ様にマッサージをしていきましょう。

 お口の周りから始めましょう。

 手順2 お口の周りを柔らかくもむ(ギョウザの皮を包む要領で)

 子供の上唇と下唇を親指と人差し指を使って、軽くつまんで揉んでゆきます。丁度ギョウザの皮を包み込む様な感じのマッサージです。唇の中心から口角へ向かって、1,2,3点程度移動してゆきます。これを3回程度繰り返します。

 その後に手順1で行った軽擦を口の回りだけ2回づつ行います。

 そしてもう一度同じ手順で繰り返し、お口は終了です。

 

 目と眉毛と額とこめかみのマッサージです。

 中指の腹を使ってやると優しくできます。

 手順4 目と眉毛と額を柔らかくもむ(目のくぼみの際がポイント)

 目のぐぼみが最下部です。そこのやや上、つまり眉の直下が1つのラインです。そこをまず中指で2点から3点で中心から外側にやわらかく回転もみをします。2回。
 次は眉の直上を同じ様に2回。 これはこめかみへ向かって数点増えてもいいです。
 そして、こめかみを1点クルクルマッサージします。
 額も3点から4点で正中線(身体の真ん中の線)からこめかみに向かってマッサージです。2回

 その後に手順1で行った軽擦を額の回りだけ2回づつ行います。

 そしてもう一度同じ手順で繰り返し、目と眉毛とこめかみのマッサージは終了です。

 

 最後は鼻のマッサージです。

 麻痺側の鼻も動かせなくなっているので、治療します。

 手順3 鼻の横を中指を使ってクルクル回転もみ

 鼻の横を下から上にそって揉み上げてゆきます。手順1の鼻周りの軽擦と逆の方向です。回転もみで同じラインを3回やります。

 その後に手順1で行った軽擦を鼻の横に2回づつ行います。

 そしてもう一度同じ手順で繰り返し、今度は手順の1の顔全体を軽擦して終了です。

 何度も繰り返して行くうちにマッサージは上手にできる様になりますので、初めはぎこちなくとも大丈夫です。パパに代になってもらって練習してもいいかもしれませんね。


 ◎マッサージの意義

 子供の顔のマッサージの意義についてお話します。
  一般的に麻痺が起こっている顔には、血液の循環が悪くなっています。もともと神経に栄養などを供給する血管の炎症などでもこの顔面神経麻痺は起こります。こうした血液供給のサポートも大事な治療です。
  また、筋肉における萎縮についてもこうしたサポートが役に立ちます。顔の筋肉はそう簡単に萎縮はしないのですが、長い間血流の流れが悪い場合にはこうした回復に影響が出やすいためにマッサージは必要です。
 子供の治療において一番の難関は、こうしたマッサージを上手に受け入れてくれるか?という点です。地道にあやしながらすることが大切ですから、ママもあせらず子供が慣れるまで遊びの感覚を持って接していいんです。百戦錬磨の私でもなかなか強烈な赤ちゃんには苦戦するんですよ!(笑)みんな自分の子供だと思って接しています。
  このコンテンツでは解らないところがありましたら、以下の「顔面神経麻痺を考える」を参照して下さいね。それでも解らない人はメールを下さいね。それじゃマッサージお願いいたします。

 この顔面神経麻痺について、お悩みや御相談がありましたら 、治療の窓の掲示板、顔面神経麻痺をやっつけに行く掲示板、メールなどから、お気軽にお問い合わせ下さい。院長がお返事いたします。

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顔面神経麻痺 特設掲示板

 顔面神経麻痺に関係する執筆内容のページです。是非読んでみて下さい。
 こんた治療院 <治療の窓>より抜粋しました。
 毎日、診察の合間にコツコツと執筆しながら早23年が経ちました。皆さんに1つでもお役にたてる事がありましたら、幸いと思いながら、今も尚治療の合間に書き続けている内容です。全国の方から色々な御質問などいただき、毎日心を込めて返信しています。そうしたみなさんの力で、今日まで一生懸命やっていて良かったと思うのは、インターネットのすばらしさの1つだと考えています。
 シリーズ
 顔面神経麻痺を考える

6.1 後遺症各論
<病的共同運動の強調>

7 小児の顔面神経麻痺
:ケア編

8 顔面体操と
顔面の運動は、
やってはいけない

10 顔の痛み 三叉神経痛

21 随意運動と不随意運動

23 やっつけに行く
今回は、
鬼軍曹の
独り言ですか?

 コンテンツ紹介






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